メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

駱駝が針の穴を通るより難しい

北朝鮮では、“張成沢国防副委員長”が罷免というか“粛清”されてしまったらしい。北朝鮮の報道によれば、「張成沢を除去し、一党を粛清することにより・・・」だそうである。日本で“除去”という漢字語は、おそらく物質や植物のみを対象に使われているから、何だか余計に凄い雰囲気を感じてしまう。
91年にソビエトが崩壊すると、多くの衛星国で、体制が変革を余儀なくされたため、いずれは、これが北朝鮮にも波及して、南北の統一が実現するかもしれないと誰もが思ったのではないだろうか?
2000年頃、クズルック村の工場で、出向者の方から、「うちの生産拠点が北朝鮮に出来たら、おまえ通訳で行ってみるか?」と冗談交じりに言われたこともある。
あれから、さらに10年以上過ぎて、まだ北朝鮮発の時代錯誤なニュースを聞くことになろうとは夢にも思わなかった。しかし、あの体制は、そろそろ限界に近づいているような気もする。
あれだけ閉鎖的な体制で、人口も2500万に満たないのに、核開発に成功するなど、科学的水準は決して低くない。少なくとも教育のある人々は、世界情勢の変化をある程度把握しているのではないかと思う。いつまでも、恐怖だけで現体制に服従させるのは難しいに違いない。
そこで、これは単なる私の空想だけれど、例えば、韓国の朴大統領の度を越した“反日”、あれはひょっとすると南北統一を見据えた理論武装の一環であるかもしれない。南北の壁を越えたイデオロギー闘争が既に始まっている・・・なんて考えたら、面白いなというぐらいの話だが・・・。
しかし、現実問題として、韓国国内の親北勢力に対応するため、朴大統領も簡単には“反日”の旗を降ろせなくなっているのだろう。まったくイデオロギーが現実より優先されてしまう社会は大変だ。
100年前も、観念の世界だけで生きていたかった知識人・安重根は、次から次へと現実を突きつけて来る日本、その中でも取り分け現実主義的だった伊藤博文に我慢がならなかった・・・というのは空想が過ぎるとしても、あの日韓の両雄を並べてみると、私は日本の英雄が常に現実を直視していたことに感謝したくなる。
50年前の韓国では、父・朴大統領がそうやって現実を直視して、“漢江の奇跡”へ一歩踏み出したはずなのだが、今でも、ちょっと教養のある韓国の人と話すと、相変わらず父・朴大統領に対する非難の声が高いので驚いてしまう。あれでは娘・朴大統領も落ち着いて現実と向き合っている場合じゃなくなる。
父・朴大統領は、独裁者でもの凄く“悪い人”だったらしい。しかし、そう言って故人を貶してやまない人たちは、どれほど“善い人”なのか? この人たちがキリスト教徒であれば、彼らが天国へ迎え入れられるのは、駱駝が針の穴を通るより難しいような気がする。

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