メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

イスタンブールの学習塾

ここのところ御無沙汰しているが、昨年来、イスタンブール市内の学習塾を訪れる機会が度々あった。
この学習塾は、大学受験に備える授業が主で、廊下には、一流大学合格者の写真がずらりと並んでいる。

経営者の方は、神学部を卒業した敬虔なムスリムだが、特定の教団とは関係がないように思えた。民族主義的な傾向の強い方で、今はAKPらしいが、以前はMHP(民族主義行動党)を支持していたようだ。
10年ぐらい前、実費で日本の教育現場を視察しに行ったほど、日本には興味があり、ソロバン塾を開きたいと言って、イスタンブールで講師を探していた。
ソロバンは、最近、トルコでも話題になっている。しかし、学習塾の廃止が騒がれる中、ソロバン塾は大丈夫なのだろうか? 数ヶ月前会った時は、「学習塾の廃止? まあ直ぐには何も起こりませんよ」と笑っていたが・・・。

塾の受け付け事務所で、受講を希望して相談に来た母娘を見たこともある。

この母娘、お母さんが一生懸命相談しているのに、派手にお洒落した高校生の娘は、肩まで伸びた髪をいじったりしながら、キョロキョロと落ち着きが無く、傍から見ていても駄目そうな感じだったけれど、面接している先生は、「努力すれば何とかなります」と、これまた一生懸命お母さんを説得しようとしていた。
まあ、営利目的でやっている訳だし、教えて見る前から、「この娘さんじゃ見込みないでしょう」なんて言うはずがないのだろう。
孫の高校生男子が欠席していないかどうか心配して、様子を見に来たお祖母さんもいた。

担当の講師は、スカーフをきっちり被った敬虔そうな中年女性だったが、「その年頃の子が直ぐに帰宅しなくても普通です。あまり締め付けないで下さい。お祖母さんにここまで来られたら恥ずかしがりますよ」と穏やかに理解を求めていた。

お祖母さんは、60~65歳ぐらいだったろうか? その世代にしてはモダンな服装で、もちろん頭には何も被っていなかった。
トルコに学習塾がいつ頃からあるのか解らないが、91年、私が初めてイズミルへやって来た頃には、アルサンジャク学生寮の周りにも学習塾がたくさんあって、そもそも寮生の多くは、その学習塾に通う予備校生だった。
それが、この10年ぐらいで、もっと急激に増えているらしい。結局、産業化が進んで、学歴を問われる職種の雇用機会が多くなり、何とか良い大学へ行けば、将来が開けるかもしれないと誰もが思えるようになったため、親も子も一生懸命になって来ているのだろう。
これは良い傾向に違いない。人々にやる気がなければ、上からいくら素晴らしい教育改革を押し付けても無駄になってしまう。今、人々はやる気になっている。この社会のダイナミズムに注目すべきじゃないかと思う。

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