メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコの諜報機関“MIT”の長官

先週、ワシントンポスト紙のデビッド・イグナシアスというコラムニストが、「2012年の初頭、トルコの諜報機関は、イランで活動しているイスラエルのスパイ10人の氏名をイランの諜報機関に通知した」とすっぱ抜いたそうだ。
以来、トルコでは、これについて色々な憶測が取り沙汰されているけれど、イグナシアス氏が何を狙って記事を書いたのか、またその情報は何処から得たのか等々、どうも良く解らないことが多いらしい。
情報源に関しては、アメリカもイスラエルも、これを否定している。イスラエルの報道官は、「トルコとイスラエルの関係を悪化させようとする何者かが仕組んだか、あるいはイグナシアス氏の個人的な目的によるものかもしれない」などと述べたようである。
イグナシアス氏の“個人的な目的”とは、2009年のダボス会議でイグナシアス氏は、エルドアン首相と激しくやり合ったから、その報復ではないのかと言いたいらしいけれど、エルドアン首相がトルコ国内で、これによって痛手を被ることはないだろうと分析する識者もいる。トルコ国民の多くはイスラエルを嫌っているからだ。
2012年の初頭は、トルコとイスラエルの関係が最も悪化していた時期だが、今は双方が関係の修復に努めているところだから、「なんで去年の話を今頃・・・?」と多くの識者が首を傾げている。
一方、この一件では、トルコの諜報機関“MIT”のハーカン・フィダン長官がまたもや話題に上っていた。こんなに有名になった諜報機関の長官も珍しいのではないかと思う。トルコでは、既に誰もが、その名と顔を知っているだろう。
フィダン氏は、3年前に弱冠42歳で長官に抜擢された。以来、前長官のエムレ・タネル氏が築き上げた反政府クルド組織PKKとの関係を継続させて、クルドとの和平交渉では重要な役割を果たしてきたらしい。
エムレ・タネル氏は、“MIT”の生え抜き、ディヤルバクルの出身でクルド語に堪能であり、それで昇進したとも言われていて、なかなか凄みのある顔つきだったけれど、長官になった時点で既に60歳を過ぎていた為、映画に出て来る“スパイ”のイメージからはほど遠かった。
そこへ行くと、若いフィダン氏は元軍人で体格も良く、いかつい面構えで、如何にも“スパイ”らしい。トム・クルーズみたいに、飛んだり跳ねたり格闘したりするのかどうか解らないが、2階の窓から飛び降りるくらいなら、難なくやってのけそうな感じがする。メディアが話題にするには、格好の材料なのかもしれない。