メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

アサドの問題はその母堂

AKPは、既に8ヶ月後の選挙に向けて準備を始めたようだが、第一野党のCHPは何をしているのだろう?

CHPは、今回の騒動が始まる遥か前、AKP市政が再開発計画を発表した時点で、ショッピングモールなどにより不利益を被る周囲の自営業者らに呼びかけ、反対運動の先頭に立っていれば、共感を得て、かなり支持層を拡大できたのではないかと思えるけれど、あの辺の自営業者数人に訊いた限りでは、どうやらそういう地道な活動はしていなかったらしい。

エルドアン首相は、若い頃、エルバカン氏が率いるイスラム系政党の下部組織で政治活動を始めると、ベイオール辺りの酒場を一軒一軒歩いて支持を訴えたそうだ。

だからといって、そのイスラム系政党に投票した人は、まずいなかったと思うが、少なくともお互いの意見を聞く機会にはなっただろう。このエルドアン首相が他人の意見を余り聞かないという風説は、どうにも信じ難い。

CHPは、騒動が勃発すると、数人の議員が抗議デモに加わったりして関与したものの、主導的な役割を果たすことはなく、どっちつかずの曖昧な姿勢に終始した。この為、抗議活動を行っている人たちからも、それほど高い支持は得られていないらしい。

この体たらくで、8ヶ月後の選挙を戦えるのだろうか?

イシ銀行の株主であるCHPには、潤沢な政治資金があると言われているけれど、そうやって楽をしているから却って駄目になってしまうのかもしれない。宗教やらイデオロギーの問題じゃなくて、苦労をしなくて済む状況が一番拙いような気もする。

先月、ミリエト紙に、シリア問題に関するダウトオール外相のインタビュー記事が掲載されていた。ダウトオール外相によれば、アサド大統領の問題は、母堂が未だ存命であることだそうだ。

ダウトオール外相は、トルコとシリアがかなり危機的な関係に陥った後も、ダマスカスを訪れて、アサド大統領を説得しようとしたが、「私たちと話した後、彼は母堂のところへ行って話してしまう。母堂は彼の父、そして父がハマーで実践した方法を思い出させる」、この為、何の結果も得られなかったと言うのである。

インタビューしたアスル・アイドゥンタシュバシュ氏もこの話が興味深いと思ったのだろう。記事の見出しは、「アサドの問題はその母堂」となっていた。

アサド氏は、恐怖政治を敷いた父の地位を譲り受けてから、確かに民主化を図ろうとする意志は持っていたに違いないが、結局、民主化は殆ど進んでいかったという批判もある。「今やろうと思っていたのに・・・」は、やはり通用しないのではないだろうか。

CHPと同じで、楽に座っていられる人が大事を成すのは難しかったかもしれない。