メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

恐るべしエルドアン

この2週間ぐらい、日本でも連日トルコ関連のニュースが報道されていたようだ。“YouTube”に、「トルコ」で検索をかけると、毎日新しいニュースが必ずいくつかヒットしていた。
中には、公園を占拠した若者たちのテントを訪れて、なかなかロマンティックに取材した報道もあった。かつて、日本のマスコミは、三里塚闘争にあれほど同情的だったろうか?
まあ、日本でも、暴れるインテリや学生さんたちに対して、マスコミはある程度同情的だったかもしれない。しかし、暴走族が騒ぐと、たちまち“社会のダニ”になってしまう。ふざけやがって・・・。
タクシム広場と公園の事態が沈静化して、日本でトルコ関連の報道は減るだろうけれど、トルコでは、これからの展開がもっと重要じゃないかと思う。
AKPは、先週末にアンカライスタンブールでミーティングを開き、8ヶ月後の地方選挙に向けて、早くもキャンペーンに入った。
ミーティングでエルドアン首相は、抗議デモに不参加を表明したMHP(民族主義行動党)に感謝し、会場にはMHPの旗も翻っていた。同じ中道右派であるMHPの支持層を切り崩しにかかったのは明らかだ。MHPのバフチェリ総裁はすぐさまAKPに抗議して、支持層の引き締めに乗り出している。
近所のジャー・ケバブ屋さんの人たちは、エルドアン首相への支持が70%に増えると話していたが、果たしてどうだろう?
2011年の国政選挙の結果を見れば、AKPとMHPの票を合わせても約63%にしかならない。他の中道右派支持者やイスラム守旧派を全て合わせたところで、せいぜい65%ぐらいだから、切り崩しが巧く行ったとしても、AKPの得票率は55%程度が上限であるような気もする。
しかし、エルドアン首相が今回の騒動をきっかけに党内や支持層の引き締めを図り、かなり成果を得たに違いないと指摘するヴァハップ・ジョシュクン氏のような識者もいる。
ヴァハップ・ジョシュクン氏は、6月17日付けのザマン紙で、エルドアン首相が強硬な表向きの発言とは異なり、当初より陰謀説などに囚われることなく、冷静に抗議デモの各グループの相違を見極めて対応していたのではないかと論じている。
もしも、これが事実であるとしたら、逆風をもエネルギーに変えてしまうエルドアン首相“恐るべし!”と言わざるを得ないが・・・。