メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

大丈夫か?

昨年、トルコ人の知人と飲んでいたら、彼がこんなことを言う。
「トルコの建設会社の施工技術は、もう先進国に引けをとらない。だから、設計の面で先進国に協力してもらえれば、施工は我々だけで出来る」
トルコの建設業界は、周辺国からたくさんの工事を受注して、華々しい展開を見せているから、多くのトルコの人たちが、同様の自信を持ち始めているようだ。
でも、トルコの施工技術は、実際、そんな高いレベルなんだろうか? 私には全く解らない分野だけれど、イスタンブール市内で進められている様々な工事の模様を見ていても、何だか疑わしい気がする。
例えば、今、抗議デモが行われているタクシム広場の工事。道路を地下化させるだけで、それほど難しい工事にも思えないが、全ての交通を遮断し、上から掘り返して進めていた。他の地下鉄工事なども同様である。だから、工事が始まるたびに、市内の交通が麻痺して大騒ぎになる。
日本では、随分昔から、地下鉄の工事で、交通を全面的に閉鎖したりしていなかったように思う。いつの間にか、地下で工事が進んでいて、いつの間にか終わっていた。
最近、東急東横線渋谷駅の地下化が話題になっていたけれど、代官山で新線と旧線を切り替える作業を、施工会社は電車の運行を全く妨げることなく、4時間で終わらせてしまったそうだ。こういうのを“施工技術”と言うんじゃないだろうか?
トルコでは、かなり優秀な人でも、ある程度の目標に達すると、それに満足してしまい、精進を止めてしまう場合が多いように思えてならない。
目標すら定まっていない私如きの愚物が言っても始まらないが、日本で世に出るような人たちは、大概、一定の目標に満足せず、あくなき精進を続けていると思う。イチロー選手が全ての記録を“通過点”と言うように・・・
知人は、あの程度の“施工技術”でも、「先進国レベル」と言って満足していた。施工技術に限らず、民主主義でも何でも、少し前進するとそれで満足してしまう。この体たらくで、これからも長期的な経済発展が維持出来るのか心配になる。
今回の抗議デモ騒動、日本の安保闘争もこんな感じだったのかどうか、私には解らない。 でも、あの頃の日本は、デモばかりでなく、あらゆる分野でもっとエネルギーを燃やしていたような気がする。だから、経済も凄い勢いで発展していたし、多少の騒乱があっても堪えられる体力を持っていたのではないか。
今のトルコにその体力があるのだろうか? 抗議デモ側も政権側も、良く考えてもらわないと、騒ぎを続けている間に経済が失速して沈没してしまうかもしれないと危惧するトルコ人の識者も少なくない。
しかし、抗議デモ側に、民主主義など主張する資格は殆どないと思う。彼らの中には、騒乱が続けば、軍がクーデターを起こして、AKP政権を排除してくれるのではないかと、未だに期待している連中がいる。
「AKPが政権を取れたのはアメリカのお陰だ。しかし、AKPは最近アメリカの言うことを聞かなくなったから、もう切り捨てられる」という陰謀説を開陳した左派CHP支持のトルコ人がいた。こういう怪しげな陰謀説はどうでも良いけれど、これに期待して喜んでいる男の顔を見たら唖然としてしまった。
彼は、AKPとアメリカから、アタテュルクの国を守りたかったわけじゃないらしい。自分がそれまで主張して来た薄っぺらい思想の正当性と僅かばかりの権益を守りたかっただけではないのかと疑う。
政権側も、来週、AKP支持者のミーティングを挙行すると発表したが、デモにはデモで対抗するつもりなんだろうか? こちらの民主主義も随分お粗末であるような気がする。

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