メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

騒動の行方

フェトフッラー教団は、“クルド和平交渉”などで、AKP政権(特にエルドアン首相)との齟齬が取り沙汰されていたけれど、今回の騒動でも政権の対応を厳しく非難したりして、いよいよ対立が鮮明になって来たような気がして興味深い。

一説によれば、この対立は、政治や宗教信条の違いと言うより、もっと利害関係に関わるものであるらしい。

あるジャーナリストは、教団に対して、「文句があるなら、自分たちも政党を作ったら良いだろう」と書いていたが、思わず『そこまで言うのか?』とのけぞってしまった。

どちらの言い分が正しいのか解らないけれど、お互いに功績を認め合って、もう少し穏やかに袂を分かてば良いのではないだろうか。

折りしも、教団の支援によると言われている“国際トルコ語オリンピック(トルコ語による弁論等の大会)”が始まっている。教団が、生臭い政治の世界に立ち入らず、こういった文化活動に邁進してくれたらと願いたい。

さて、騒動の行方はどうなるだろう? 昨日も、出先からの帰途に、タクシム広場へ寄ってみたら、公園では、人々が楽しそうに輪になって踊っていた。でも踊りに飽きたら引き上げてくれるわけじゃない。建設工事を始めるのは難しいのではないか。

エルドアン首相も、ショッピングモールで譲歩したまでは良かったものの、建造物の建設には固執し、またもや緊張を煽るような強硬発言を繰り返して、与党支持者からも批判の声が出ている。

まあ、建設計画には巨額が動いているだろうから、今更、中止するのも大変かもしれないが、暫くこちらは棚上げして、今進められている地下道路の工事を早く再開し終わらせてもらいたいと思う。工事が長引いて周囲の商店等は皆迷惑している。

抗議デモの人たちも、「エルドアンが辞任するまで止めない」なんて言うのは勘弁して欲しい。

かつて日本でも、一部の知識人は、田中角栄に我慢がならなかったそうだけれど、同様に、彼らもエルドアンに我慢がならないらしい。しかし、人々が角さんやエルドアン首相を慕ってやまない理由も同じところにあるような気がする。宗教的信条などは二の次だろう。

昨日は、帰りのバスの中でも、ちょっとした出来事があった。

自動車専用道路で渋滞に嵌ったバスを、他の車が、緊急車両通過用の路側帯から、どんどん追い抜いて行く。すると、乗客の3~4人の男たちが、大きな声で文句を言い始めた。

「おい、運転手。なんで路側帯を通らないんだ!」
「何を言うんですか? 私に交通違反しろと言うんですか? 路側帯を通るのは禁じられています!」
「じゃあ、追い抜いて行く車は何なんだ? おい見ろ、同じ市バスにも抜かれたぞ! 規則を守っているのは、お前だけじゃないか!」

それでも、運転手さんが態度を変えることは無く、バスは渋滞の中をそのままのろのろと進んで行った。

私は日本で、1年ほど長距離トラックの運転手もやったけれど、その間、路側帯を走る同業プロドライバーは、まず見たことがなかった。これは何も遵法精神の為じゃない。路側帯も塞いで緊急車両の通過を妨げたら、自分たちが困るだけだ。だからやらない。

トルコでは、プロドライバーも平気で路側帯を走るから呆れてしまう。こうして、色んな業種のプロが、同様に不正を働くから、当然、政治家も不正を働くのだろう。

政権の不正は、何もAKPに始まったわけじゃない。アタテュルクが創設した現第一野党のCHPは、やはりアタテュルクの指示によって設立されたイシ銀行の株主になっているから、資金調達も楽だったのではないかと思うが、こんなのは構造的な不正であるような気もする。

 

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