メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

韓国大統領の就任式

先ほど、朴槿恵氏の大統領就任式を“YouTube”で観た。最近、私の韓国語のヒアリングも大分衰えてしまったけれど、一語一語はっきりお話になっていたので、とても聴き取りやすかった。
思えば、ちょうど25年前、私はソウルの下宿で盧泰愚大統領の就任式を観ていた。あの頃は、一生の仕事にするつもりで韓国語を学んでいたから、25年後に遠いイスタンブールで、仕事もなく先行きの不安に怯えながら、韓国大統領の就任式を観ることになろうとは夢にも思っていなかった。
あのまま韓国関連の仕事を続けていたら、少なくとも生活は成り立っていただろう。それなら、何しにトルコへ来たのかと言われてしまうが、もともと私には、韓国よりトルコに対する興味や関心の方が遥かに強かった。
高校時代、私はトルコについて書かれた本を読んで、“メルハバ”などいくつかトルコ語の単語を知っていたけれど、韓国語の“アンニョンハシムニカ”が解っていたかどうか心もとない。
その後、せっかく学んだ韓国語から離れ、トルコへの興味を再燃させたのは、ちょっと日韓の間に身を置くのがきついと感じるようになったからで、要するに、居た堪れなくなってトルコへ逃げ出してしまったのである。
だから、この私が日韓の友好を論じたら恥ずかしいが、日本と韓国は、日本の意志によって36年間の歴史を共有した間柄であり、この36年間を忘れるわけには行かないと思う。
反日に関しては、よく台湾と韓国が比較されるけれど、中華民国は日本から独立した国じゃないから、事情が異なるのではないだろうか? 中華民国は国家の正統性を辛亥革命に求めることができる。
トルコ共和国は、アタテュルクによる救国戦争と革命を称え、その前の支配体制であるオスマン帝国を否定することによって正統性を得た。
しかし、韓国の場合、日本との独立戦争に勝って独立したのであれば、これを誇って正統性の根拠にできたが、残念ながらそういう歴史はなかった。そうなると、前支配体制の日本を徹底的に貶めて否定するより方法はなかったかもしれない。
25年前、韓国の新聞に、“尊敬する歴史上の人物”といったアンケートの結果が載っているのを見て唖然とした。10位までに出てきた韓国人は、ハングルを創始した“世宗大王”、抗日武力闘争の指導者“金九”、伊藤博文を暗殺した“安重根”だけだったように記憶している。1位はイエスだったと思う。あとは孔子であるとかリンカーンなんて名前まで並んでいた。なんという自虐的な歴史観なのかと驚いた。
“漢江の奇跡”という世界史上まれに見る壮挙を成し遂げた朴正煕大統領の名は何処にも見当たらなかった。もちろん“漢江の奇跡”には負の面もあったに違いないから、まだその傷も癒えていない当時、自分たちの誇るべき歴史を正当に評価するのは難しかっただろう。下手をすると、朴正煕大統領は“憎むべき歴史上の人物”の中で日本人と一緒にその名を書かれていたかもしれない。
しかし、ある人が誰かを恨みに思って見返してやろうと頑張る時、それは凄いエネルギーを生むかもしれないけれど、あまり幸せな状態ではないような気がする。現在、韓国の社会があまり幸せじゃないとしたら、こんな所に原因はないだろうか?
今日、朴正煕大統領の娘である朴槿恵氏が大統領に就任し、「“漢江の奇跡”を再び」と国民に呼びかけていた。これから朴槿恵大統領の任期中に韓国の経済が好転すれば、韓国の人たちは“漢江の奇跡”という偉大な歴史を誇り称えることにより、もう必要以上に日本を恨まなくても済むようになるかもしれない。

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