メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

なんという奇遇!

先週、取り止めになった連続ドラマの撮影は、脚本を変更して、昨日、トラブゾンで実施された。3月と聞いていたのは、放送日のことで、ちょっと勘違いしていた。

昨日は夕方の6時に撮影が終わり、9時過ぎの飛行機でイスタンブールへ戻ることになった。

飛行機の座席、私は通路側で、一つ置いて窓際の席には、同年輩の男性が座っていた。着席して、機内誌をペラペラ捲っていたら、後からきた若い女性に「私、真ん中の席なんですが、宜しかったら一つずれてもらえませんか?」と頼まれた。

快く移動してあげると、それがきっかけで会話になり、到着時間を訊かれ、それを私が窓際の男性に訊いたことから、彼も仲間に加わり、さらに話が弾んだ。

しかし、私は前の晩に3時間しか寝ていないし、かなり疲れていたので、着席したら急に眠くなって、若い女性の「疲れているのかしら」という声にはっと気がついた時は、不覚にも涎を垂らして寝ていた。

二人は、急に寝入ってしまった私を見て、少し心配していたらしい。ただ寝ていたことが解るとホッとしたように笑っていた。飛行機は未だ待機中で、多分、時間にしたら1~2分のことだろう。

離陸してから30分ぐらいの間、私は完全に寝てしまったが、目を覚ますと、2人の会話は未だ続いていて、私もそこに加わった。

男性はイスタンブールに住んでいて、郷里のリゼから戻るところだと言う。女性は実家がサムソンにあり、現在はトラブゾンで大学に通っているそうだ。イスタンブールへは大学の友人たちと遊びに行くらしい。友人たちは少し離れた席に座っていた。

彼女には、4ヵ月後に卒業を控え、いよいよ実社会に出るのだという高揚した気分が感じられる。専門はテキスタイルエンジニアと胸を張って語っていた。

しかし、トルコでテキスタイルは、10年前だったら花形産業だったかもしれないが、これから先はどうだろうか? テキスタイルの街と言われていたブルサも、最近は自動車産業の街になりつつある。

男性は測量事務所を経営しているそうだ。温厚な紳士で、彼女に対しても「ああ、君は大学生か・・・」なんて、偉そうに話したりしないで、丁重に応じていた。

さて、飛行機がイスタンブールの上空に差し掛かり、「間もなく着陸します」とアナウンスがあってから大分経ったのに、まだ降りる様子がないので、窓の外を見やったところ、サビハギョクチェン空港の上を通り越して、マルマラ海に出ているのが解った。どうやら上空を旋回しているらしい。

殆どパンク状態で、着陸順番待ちが当たり前になっていたアタテュルク空港では、これも珍しくないが、サビハギョクチェン空港では今まで経験がなかったように思う。

でも考えてみたら、昨年の10月にアタテュルク空港へ降りた時は定刻だった。サビハギョクチェン空港の便を増やして調整を図っているのだろうか?

お陰で、20分着陸が遅れた。ただでさえ、イエニドアンへ帰る市バスの時間にぎりぎりで間に合うと思っていたのに、これで完全にアウト。時間の心配は、機中の会話でも伝えていた為、男性は「間に合いますか? 何処へ帰るんですか?」と訊いてくれた。

「サンジャクテペです」と答えたら、なんと男性もサンジャクテペの辺りらしい。

「えっ! 私もサンジャクテペの方に帰るんですよ。親戚が車で迎えに来ているから、お送りしましょう。サンジャクテペの何処ですか?」
「イエニドアンなんですが・・」

そしたら、彼は愉快そうに笑い出した。

「私もイエニドアンですよ。イエニドアンのどの辺ですか?」
「ユヌス・エムレです」

すると、今度は手を叩いて、「それじゃあ、私たちは同じ街の住人じゃないですか!」。

結局、有り難く車で我が家の前まで送ってもらった。彼の事務所は、私がよく買い物に行くディンチマルというスーパーの隣にあるそうだ。「来週伺います」と固く握手して別れた。『こんな奇遇もあるのか?』と今でもびっくりしている。