メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

エキストラの役回り

水曜日の夕方、イスタンブールのサビハギョクチェン空港で、チェックインを済ませてフライトを待っていたら、トラブゾンから電話が掛かってきた。
「明日の撮影は延期されたから、搭乗せずに自宅へ戻ってください」
これは、昨年の10月から続いている連続ドラマの撮影で、私がエキストラで出る場面も未だいくつか残っていた。突然、撮影が延期されたのは、出演する役者さんが、腹部の激痛で病院に担ぎ込まれてしまった為だと言う。
幸い、大事には至ってないらしいが、役者さんの回復が遅れた場合、その場面をキャンセルして、脚本を少し変えるらしい。そうなると、私の出番は来月まで回って来ないそうだ。
制作会社は無駄な出費で大変だろう。ここのスタッフは、皆、とても感じの良い人たちで、エキストラにも分け隔てせず、家族のような雰囲気の中で撮影が進められていたから、とても残念。

他の撮影現場では、エキストラA、エキストラBと数えられるだけで、あまり人間らしい扱いを受けなかったりする。
先月、駆り出されたコマーシャルの撮影は、中国の工事現場という設定で、私らエキストラの役回りは、現場で働く中国人の労働者。でも、演じているのはモンゴル人に日本人、カザフ人で、中国人は一人もいなかった。
エキストラ担当の若いアシスタントの女性は、私らエキストラに口うるさく指示を飛ばし、「この角材持って、ここから向こうまで歩け」とか一人々々の動きにまで注文をつけるのだが、いざカメラが回り始めると、主役たちの動きばかり見ていて、背景のエキストラが指示通り動いているのかなんて全くチェックしていないようである。早く主役担当になりたくてしょうがないのかもしれない。
私は最初のカットで板材を何枚も担がされ、同じ動きを続けるように指示されたから、何十回も重い板材を担いで歩いていたら、最後に違う角度からアップを撮る段になって、カメラを覗き込んでいたディレクターが、「あっ、その板材持った人が写ってしまうなあ」と言い、立ち位置の変更を求めた。
そしたら、アシスタントの彼女、「あんた、なんでここに居るの?」とのたまわった。もう何十回も同じ動きを御指示通り繰り返していたのに、全く見ていなかったらしい。それとも、ディレクターの手前、そう言わざるを得なかったのだろうか?
それから、次の場面に移ったので、もう同じ動きを繰り返す必要もなかろうと思っていたら、「あんた、さっき板材を担いでいたでしょ? また同じようにしなさい」と言い出した。「これ、結構重いんですよ」と御指示に逆らったら、凄くむくれていた。
それで、カメラが回り始めてから、彼女が私の動きを見ているのか、ちらっと観察したけれど、彼女は私らに背を向けて主役の方を見ていた。
自分の持ち場で良い仕事をしようとするより、上司の御機嫌ばかり伺う人が多いように思えてならない。 

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