メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

マルテペの魚料理屋

病院に行った月曜日は、朝から雨がしょぼしょぼ降っていた。病院は、カルタルの駅から歩いても15分ぐらい掛かる。12年前は車で行ったから、駅の直ぐ近くという印象だったが、そうでもなかった。
診療が終わって外に出たら、雨は本降りになっていた。うちへ乗り換えなしに帰れるバスに乗ろうと思ったら、駅を通り越して、さらに10分ぐらい歩かなければならない。おまけにこのバスは1時間に一本ぐらいしか来ない。
病院の前の通りを見ると、カドゥキョイへ行くバスが通るようだ。そのバスでボスタンジュまで出て、そこからまたバスを2度乗り継げば、うちまで行く。こちらのバスは、いずれも10分間隔で来る。
停留所までは5分も掛からなかったし、バスも直ぐ来た。しかし、乗って暫くしたら、バスはマルテペの辺りで渋滞にはまり、なんだか殆ど前進する様子もない。諦めて、ボスタンジュまで電車で行こうとバスを降り、多分、一度も歩いたことがないマルテペの街を物珍しそうに歩いていると、一つ先の通りに、ちょっと洒落た魚料理屋の看板が出ているのを発見した。
近づいて見たら、鯖サンドのメニューもある。お腹も減っていたので、ここで食べて行くことにした。
この魚料理屋は、2ヶ月前に開店したそうだ。黒海地方のリゼ県出身という40歳ぐらいの男性が経営者で、他に東部のカルス県出身の青年と、黒海地方内陸部のギュムシャハネ県が故郷だと言う若い女性が働いていた。
若い女性は、両親がギュムシャハネ出身というだけで、おそらくイスタンブール生まれだろう。大学生ぐらいに思える。彼女、私の顔を見るなり、「韓国人ですか?」と訊いた。
なんで韓国人と思ったのか訊き返すと、「韓国人の知り合いがいるので・・」と答える。
「その韓国人とは何処で知り合ったの?」
「教会です」
この返答にはちょっと驚いた。
「貴方はクリスチャンなんですか?」
「いいえ、私はムスリムです。ちょっと興味があって行くだけです」
「教会は何処にあるの?」
「直ぐ近くです。プロテスタントの教会で韓国人がたくさん集まりますよ」
教会には、彼女のように興味本位で来るトルコ人が他にもいるそうだ。ギュムシャハネはかなり保守的な地域に思えるし、リゼもカルスも同様である。マルテペはそういった地方から出てきた人たちが多いから、イスタンブールでは保守的な方じゃないかと思う。
そんな街の魚料理屋で、近くにある教会が面白いなんて話している。カルス出身の青年が、「時代は変わったんです」と笑っていたけれど、こうして人々の趣味や志向はますます多様化して行くのだろう。
若い女性は、未だ昨年高校を卒業したばかりで、志望する大学に受からなかった為に一浪中だという。それで気軽に魚料理屋でアルバイトもしている。時代は変わった・・・。

merhaba-ajansi.hatenablog.com