メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

一杯の暖かいコーヒー

12月4日の火曜日。イスタンブールは朝から冷たい雨がふり、いよいよ冬の到来を告げるかのよう。
朝、ヨーロッパ側で人と待ち合わせることになったが、先方は車でいらっしゃるから、解り易い場所が良いと思い、トランプタワーという高層ビルの前にした。
早めに着いて、車が停まれる場所かどうか確認し、高層ビルの脇に佇んでいるキオスクのような店で、1リラのガムを買ってから、近くの喫茶店に入った。
待ち合わせの15分前に喫茶店から出て、トランプタワーの前に戻ったら、一時止んでいた雨が本降りになり、おまけに傘を差したら吹き飛ばされてしまうような強い風で、とてもじゃないけれどボンヤリ立っていられない。
そこで、先ほどのキオスクの軒先に避難して、先方にこれを伝え、そのまま軒先を借りて待つことにした。
五分ぐらい経っていただろうか、後ろから肩を叩かれたので、振り向いたら、キオスクのおじさんが、ビニールコップに注いだコーヒーを差し出しながら微笑んでいる。
「えっ? これ私にですか?」と訊いても、おじさんは「寒いねえ」と笑うだけ。有り難く頂戴して、飲み終わってから、再び礼を述べて握手したけれど、それから間もなく車が来たので、挨拶もそこそこにその場を離れた。
この店で買い物したのは、多分、その朝のガム1リラしかないと思う。顔見知りでも何でもない。とても暖かくて美味しいコーヒーだった。

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