11月30日、私が飛んだのは、グルジアのバツーミだった。
とは言っても、目的地はトルコ領内のホパであり、10月にお伝えした連続ドラマで、もう二場面の撮影が残っていた。チケットは先方が手配してくれる。
グルジアとの国境に近いホパへ、トルコの国内線を使って行こうすると、最も近いトラブゾンの空港からでも、2時間ぐらい掛かってしまう。
それで、グルジア領内のバツーミに飛び、それから国境を越えてホパに入るのである。これだと1時間も掛からない。
近年、トルコとグルジアは交流が盛んになり、トルコの国民はパスポートを携帯しなくても、国民登録証があれば、グルジア国内に入れるそうだ。
トルコ国民じゃない私は、パスポートを持参し、サビハ・ギョクチェン空港で出国のスタンプを押してもらった。
バツーミの空港に着いたら、グルジアの入国審査のゲートの前で、女性の係官が「ホパ! ホパ!」と声を掛けながら、ホパへ行く乗客たちを別室に案内していたので、私も付いて行ったけれど、パスポートに出国スタンプを押されている私は、他のトルコ人乗客と少し立場が違う。
心配になって、その女性係官に、パスポートを見せながら状況を説明しようとしたら、そのままパスポートを手に取り、リストと照らし合わせながら、「マコト・ニイノミ、OK!」と言ってリストにチェックを入れ、入国審査は必要無しと言う。
なおも不安だったので、隣にいたトルコの人にも訊いたら、「貴方のチケットはホパ行きでしょ? ちょっと見せてよ」と私の手から半券を受け取ると、“XHQ”という記号を示しながら、「ほら見て、ホパじゃないか。これなら問題ない。バツーミ行きのチケット買っちゃうと困るけれど・・・」と説明してくれた。
どうやら、係官が持っていたリストには、ホパ行きの乗客名が記されていたらしい。それから、係官の誘導に従って外へ出たら、そこにはトルコの空港リムジン会社“ハヴァシュ”のバスが待っていて、バスはイスタンブールのナンバーだった。
つまり、ホパ行きチケットの乗客は、グルジアに入国することもなく、そのままバスでトルコ領内に戻されてしまうのである。