メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

多宗教の共存

幸福の科学”については、トルコ語の出版を請負った出版社も、単なる“メディテーション”と思っていたようである。
その宗教性が明らかになった場合、イスラム的な人たちは反発するかもしれないと、ひと頃までは、そういった宗教的な衝突が恐れられていたけれど、今のトルコでは、これも恐れるに足りないような気がする。
イズミルで、プロテスタント教会の牧師を務めているトルコ人の友人によれば、2007年以降、教会活動が何らかの妨害を受けていると感じることは全く無くなったそうだ。
民衆レベルでは昔から無かったかもしれない。2007年以前の宗教的な衝突も殆ど政治的な事件だったと言われている。トルコの民衆のイスラムは、文字通りの“アッサラーム”で争いを好まない。多宗教が共存していたオスマン帝国以来の伝統じゃないだろうか。
今年の3月、牧師の友人が運転する車で、イズミルからフォチャへ向かっていると、途中、ヒッチハイクで手を上げている男を見て、友人は躊躇わず車を止め、彼を乗せてあげた。その辺はバス便が少ないため、ヒッチハイクが当たり前になっているしい。
乗り込んで来た男も、近くの工場に勤務していて、シフトの交替時間によっては、バスがなかなか来ないから、いつもそうやってヒッチハイクしているそうだ。
挨拶が済むと、そのまま雑談になり、男は友人に、イズミルで何をしているのか尋ねる。
「私は、プロテスタント教会の牧師なんですよ」
「はあ、そうなんですか。その教会は何処にあるんですか?」
「アルサンジャクにあります。駅の近くです」
男の目的地が近づくと、友人は名刺を取り出して男に渡し、「日曜日にはミサがありますから、興味があったら寄って下さい」と言い、男も名刺を見ながら、「ああ、ここなら解ります。面白そうですね・・」と愛想を並べてから、車を降りて行った。
イズミルという土地柄もあるかもしれないけれど、“プロテスタントの教会!”“宣教師!”で、もう誰も驚かないらしい。
では、宣教活動が巧く行って、キリスト教の信者も増えるのかと言えば、そんなことはないように思う。
トルコの人たちは外交辞令を欠かさないから、ヒッチハイクの男も愛想を並べていたけれど、車を降りて暫くしたら、「世の中、いろんな奴がいるんだなあ」とか言って、友人の名刺をポイと捨ててしまったかもしれない。
先日、イスタンブール市内の大きなショッピングモールに寄ったら、もう大きなクリスマス・ツリーが飾られていた。国民の99%はイスラム教徒なのにねえ・・・。
そんなことより、とにかく“商売!商売!”

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