メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

イスタンブールで安い夜の旅

我が家のあるイエニドアンは、イスタンブールと言ってもアジア側の東端に近く、アジア側の拠点となっているカドゥキョイから市バスに乗っても1時間以上かかる。この市バスの最終は12時15分で、これを逃すとなかなか面倒なことになってしまう。
一昨日、ボスポラス海峡を渡ってカドゥキョイへ着いたのが既に12時半、終バスはとっくに終わっているから、閑散としたバスターミナルを横切って、民間の業者がやっているミニバスの乗り場に急いだ。
ミニバスとは、日本で言うマイクロバス。このミニバスも一応走行路線は決まっているけれど、始点と終点以外に停留所はなく、ダイヤも特に定められていないようだ。「この路線、最終は何時なの?」と訊いても、「1時ぐらい・・」といった曖昧な答えしか返って来なかったりする。
カドゥキョイからイエニドアンまで行くミニバスの路線はないので、まずはウムラニエ、そしてドゥドゥルへ、ここからさらにイエニドアンへと3台乗り継いで行かなければならない。ウムラニエ行きは1時頃、ドゥドゥルはもっと遅い時間まであるから心配ないけれど、ドゥドゥル~イエニドアンのミニバスは、遥か前、11時頃で終わってしまう。
しかし、ドゥドゥルまで他の路線を運行してきた運転手が、帰宅途中に客を拾って行ったりするから少しは希望がある。3週間ほど前、同じような時間にドゥドゥルまで辿り着き、10人ぐらいの人たちが希望を失わずに待っているのを見て、一緒に30分ぐらい辛抱強く待っていたら、我が家の直ぐ近くに住んでいると言う運転手さんが拾ってくれた。諦めてタクシーに乗らないで良かった。ドゥドゥルからでも25TL(約1200円)は出る。トルコのミニバスは待ち人がいる限り、これを見捨てないのだ。
一昨日も、ドゥドゥルに辿り着いたら、この日は5~6人が何時来るとも知れないミニバスを待っていた。30分ほどして1台のミニバスが止まったものの、少し先のチェキメキョイから別の方角へ向かうと言う。これを聞いて、私と一緒にウムラニエからドゥドゥルまで来た親子連れはこのミニバスに乗り込んで行ったが、私は躊躇うことなく見送った。少なくともサルガーズィまで行くのなら、『後はタクシーに乗っても10TLぐらいか?』と考えるけれど、チェキメキョイでは意味がない。
この判断は正解だった。それから3分も経たないうちに、今度はサルガーズィを経てスルタンベイリまで行くミニバスが止まったのである。躊躇わずに乗り込むと、ミニバスは少し走ってチェキメキョイでまた客を拾ったが、それは先ほどの親子連れで、お父さんの方は私の顔を見て苦笑いしていた。
彼らはサルガーズィの手前で降りて行ったけれど、多分、チェキメキョイまで行って少しでも距離を縮めてからタクシーをつかまえるつもりでいたところ、直ぐにサルガーズィへ行くミニバスが来て、思わず苦笑いだったのだろう。
サルガーズィでは、私の他にもう一人若い男が降りた。少し歩いて、スルタンベイリから来る車もつかまえられる分岐点に出ると、その若い男もそこで立ち止まったので、「何処まで行くの?」と訊いたら、これがイエニドアンで我が家の少し先だった。もちろんタクシーの相乗りで合意し、直ぐ来たタクシーに2人して乗り込んだ。我が家の前に来た時点で、メーターは9TLを示していたから、5TL紙幣を若い男に手渡して車を降りた。
トルコでは、こういう顛末が本当に楽しい。一昨日も、多額のタクシー代を使わずに、まあまあ巧く行ったから尚更だ。何だか“イスタンブールで安い夜の旅”を楽しんだ気分になる。

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