メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

アンタキアのキュネフェ

 水曜日の朝、アンタキアのイスティックラル通りで、ショーウインドウに“キュネフェ”と書かれた店があったので入ってみると、キュネフェを食べさせる店じゃなくて、キュネフェの素材になるテルカダイフやチーズを売っている店でした。小麦粉を溶いて、春雨のように細く焼き上げるテルカダイフは、店内に二つある焼台で作っています。
店主のムルセルさんに、「アンタキアで一番美味しいキュネフェは何処で食べられるでしょう?」と訊いたら、「隣の店が、うちのテルカダイフを使って美味しいキュネフェを焼いてますよ。2時間ぐらい後にまた来て下さい。11時頃ですね。焼き立てのキュネフェが食べられます」と教えたくれたので、言われた通りにして、美味しいキュネフェを食べることができました。実際、アンタキアで食べた最高のキュネフェだったと思います。
アンタキアに来て、まず日曜日の夜に、最も有名な老舗でキュネフェを食べてみたけれど、イスタンブールでやっているように、注文を受けてから焼くのではなく、作り置きしてある大きなキュネフェから切り分けて出すので、半ば冷めている上、テルカダイフは甘いシロップに浸かってサクサクとした食感もなく、非常にがっかりしました。アンタキアでは、キュネフェがどんどん売れる為、注文を受けてから焼いたのでは追いつかないそうです。
翌日は、アフメットさんが勧める店で食べてみました。ここも作り置きしていますが、ごく弱火でキュネフェを温めながら客を待ち、注文が入る度に、熱々のシロップをかけて出すので食感も良く、なかなか美味でした。
しかし、テルカダイフの表面は均一にきれいな黄金色で焼きあがっているものの、焼く時に押さえつけてしまっているのか、テルカダイフは春雨のような麺の状態を失って団子状にくっつき、期待していた食感には、ちょっと及ばない感じです。ひょっとすると、アンタキアの人たちは、サクサクとした食感より、中のチーズの味わいを重視しているのかもしれません。日曜日に食べた老舗も、チーズはたっぷり入っていました。
イスタンブールでは、注文を受けてから焼いて、熱々を出しているけれど、どの店でもチーズは少ないような気がします。それでアンタキアの人たちはがっかりしてしまうのでしょうか?
水曜の晩、帰りの飛行機で一緒になったディヤルバクル県出身の青年は、アンタキアの大学を卒業して今はイスタンブールで働いているそうですが、「キュネフェはイスタンブールの方が美味しい」と断言していました。
「アンタキアでは、テルカダイフを予め短く切ってしまい、それでチーズを包んでいるんですよ。多分、その方が作り易いからでしょう。でも、あれじゃあ、テルカダイフの特徴が生かされていません」
彼はそう説明したけれど、この水曜の午前、最後に食べたキュネフェは、テルカダイフの特徴を存分に生かして、サクサクとした食感が堪らなかった上、チーズもたっぷり入っていました。またアンタキアに来る機会があったら、焼き立ての時間を見計らって、真っ先にここでキュネフェを食べることにします。

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