メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

強面の恐妻家

クズルック村の工場にも、強面の恐妻家がいました。工程設備の営繕を行う部署で、グループ長を務めていたオメルという青年です。

オメルさんは高卒の叩き上げで、情熱的な仕事ぶりが、日本人の出向者からも厚く信頼されていたけれど、ちょっと激しやすいところがあって、なかなかの強面でした。

奥さんのナギハンさんも、製造部の有能なグループ長であり、彼女のほうが少し早く昇進したため、オメルさんは大分発奮したようです。

ナギハンさん、2002年当時で、25~6歳ぐらいじゃなかったかと思いますが、体つきが小さかった所為もあって、実年齢よりずっと若く見えました。スカーフをグルッと巻いて、小さな顔だけ覗かせている様子が、なんとなく雪童子を思わせる可憐な女性だったから、口の悪い出向者の方々は、オメルさんと比べて、「あれじゃあ、“美女と野獣”のカップルだ」なんて酷いこと言ってました。

実際のところは、オメルさん、トルコ人男性の基準からしても、相当なイケメンで、それこそ日本へ行ったら、モテモテだったでしょう。しかし、激昂して、大きく目を見開き、鼻孔を膨らませた時の形相は、確かに“野獣”のようだったかもしれません。

いつだったか、会議室で、製造部の面々と折衝中に激昂し、あの形相で椅子から身を乗り出すようにして大声を張り上げ、手がつけられない状態になると、製造部チーフのマサルさんは、そっと席を立ち、内線を使って何処かに電話していたけれど、暫くしたら、会議室にナギハンさんが入って来ました。

この時のオメルさんの反応は実に見物でした。奥さんの姿が視界に入るや否や、まずは居住まいを正し、柔和な表情になって静かに話し始めたのです。会議が終った後、マサルさんは何やら嬉しそうに、「オメルを大人しくさせるためには、彼女を呼ぶのが一番だね」と手の内を明かしてくれました。

オメルさん、会議中、隣に奥さんが座っているの忘れて、大声を張り上げたこともあります。あの時は、奥さんの反応が凄かった。冷たい視線で亭主を睨みながら、静かな声に力を込めて、「あんた、何で怒鳴るの?!」と問いかけ、たちまち制圧してしまったのです。

オメルさんの部下の男も、「うちの大将に、何か提案する時は、ナギハンさんに頼むと巧く行くね」なんて良く言ってました。

しかし、私のような腰抜け男が言うのも何ですが、外では強面を通しながら、奥さんに頭が上がらないというのは、まさに“男の中の男”であると思います。

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