メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

歩道エンジニア

 この前、イズミルへ出掛けた折に、アイドゥン市とデニズリ市にも足を延ばして来ました。アイドゥン市は、2年前に一度訪れたことがあるけれど、デニズリ市はこれが初めてです。

アイドゥン市では、メインストリートの歩道が広くてとても綺麗だと2年前にも感じていたので、今回、市の観光局の方にそう伝えたら、「アイドゥンには、あの大通りぐらいしか見てもらうようなものはありませんから・・」なんて、少々自嘲気味に話していました。

しかし、メインストリートの歩道は凹凸や陥没もなく、升目が真っ直ぐに延びていて、本当に見事だと思います。イスタンブールの歩道などは何処も酷いもんです。所々、敷石がガタガタと浮いていたり、半分に割れて陥没していたりするから、歩く時も注意しなければなりません。

数年前、歩行者専用になっているイスティックラル通りの敷石が張り替えられた時は、余りの酷さに苦情でも出たのか、工事をやり直していました。やり直した後もそれほど綺麗にはならなかったけれど、張り替えた業者への支払はいったいどうなっていたのでしょう?

行政と業者が癒着していて、監査も甘くなっているんじゃないかと疑いたくなってしまいます。まあ、ある程度はトルコの人たちの大らかな気質に起因しているかもしれませんが・・・。

いつだったか、友人の親戚がイスタンブール市内に家を新築したので、お祝いに行ったら、日本人の感覚からすれば“豪邸”と言っても差し支えない立派な造りなのに、風呂場のタイルが少し剥がれていて配管がむき出しになっているのです。日本へ留学したことのある友人が、「これは酷い。業者に文句言わなかったのか?」と訊いたら、新築した御本人は、「悪気があってやったわけじゃないでしょう。目立つ所でもないし・・・」と笑って済ませていました。重箱の隅をつつくようにして、些細なことでも文句を言う日本の消費者とはえらい違いです。 

ところで、今の若い人たちも使っているかどうか知りませんが、トルコ語スラングに“歩道エンジニア(カルドゥルム・ミュヘンディスィ)”というのがあります。エンジニアと言えば聞こえは良いけれど、これは失業者のことです。失業者は、いつも歩道をブラブラしているからでしょうか?

昔、トルコ人に職業をしつこく訊かれた場合、「エンジニアです」と嘯いて見せ、「どういう関係の?」と重ねて訊かれたら、「歩道造っています」と答えて、笑いを取ったりしました。しかし、中には、なかなか冗談の通じない人がいて、さらに「何処の歩道でしょう?」と真顔で訊くので、「あんた知らんのか? イスティックラル通りとか、あれは全て私がブラブラして踏み固めたんだよ」と言ったら、やっと解ってくれて、二人で大笑いしたものです。