メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

キャリアウーマンの涙

イスタンブールで高層ビルが立ち並ぶレヴェントの辺りへ行くと、キャリアウーマン風の女性がビジネススーツに身を固めアタッシュケースを手に颯爽と歩いていたりします。

地方都市のホテルでも、こういった女性が一人で夕食を取っている姿を見掛けたりするけれど、全国各地を営業にでも飛び回っているのでしょうか?

3年ほど前の話。地方へ出張してホテルで2日目の朝を迎え、ビュッフェに行こうとしてフロントの前を通り掛ったところ、そんなキャリアウーマン風の若い女性が泣きながらフロントの女性係員と話しているのです。

“何事か?”と思ったら、フロント係りは私を呼び止め、泣いている女性に向かって「この人です」と言いながら、私のことを指し示しました。

私が驚いていると、フロント係りは「昨晩11時頃、貴方の部屋へ男性から電話が掛かって来ましたよね?」などと私に問い質そうとします。

そう、確かに前の晩11時頃、妙な電話が掛かって来ました。

そのまた前の晩、つまりホテルへ到着した晩の1時頃には、フロントから電話が掛かって来て、「違う部屋へ御案内してしまったので部屋を移動してもらえますか?」なんて戯けたことをぬかしたものだから、「ふざけるのも好い加減にしろ!」と喚き散らしてやったこともあり、他に電話が掛かってくる当てなど全くないので、『またフロントか?』と思いながら受話器を取り、ぶっきらぼうに「もしもし何の用?」と応対したところ、男の声で「そこは315号室ですか?」と訊いて来たけれど、300だか200だか良く聴き取れなかったし、部屋番号も良く覚えていなかった上、相手はフロントという思い込みもあるから、「フロントでしょ? 何の用?」と問い返せば、「フロントじゃありません。315号室ですか?」と繰り返します。

私は少々ムッとして、「多分そうでしょ。貴方どなた? 何処から掛けているの?」、そしたら、何も言わずにガチャン。『何だ今のは?』と少し考えたけれど、殆ど気にも掛けないで、そのまま寝てしまいました。

フロント係りの話によれば、電話の男は、泣き崩れている女性の婚約者であり、315号は彼女の部屋。フロントが間違って私の部屋へ繋いでしまったそうですが、このフロント係りは私に向かって「何故、315号室ではないと応えてくれなかったのですか?」などと責任転嫁を図ろうとする始末。

私は、ムッとするのを通り越して呆れてしまい、落ち着きを取り戻して私に謝ろうとした女性に「まあ、このホテルを訴えて、賠償金を要求した方が良さそうですね」と勧めて、その場を後にしました。

しかし、晩から朝にかけて、女性とその婚約者の男との間で、どういう話があったのかは知らないけれど、そんな婚約者とは破談にでもなってしまった方が良いんじゃないかと思います。

私が、せっかく「貴方どなた? 何処から掛けているの?」と訊いてやったのだから、「お前こそ誰だ?」ぐらい言っても良かったでしょう。何とも情けない男であるような気がしてなりません。

昨日、友人と雑談しながらこの話を披露し、「君だったらどうする?」と訊いたら、「俺か? 俺だったら、『お前こそ誰だ。出て来い』と言い、間抜けな日本人がのこのこ出て来たら、問答無用でズドンと射殺だ。ワッハハハ」などと喜んでいました。