メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

どんな歌を聴いて来たのか

子供の頃、家にあった78回転レコードの中には、父が戦前に買い集めたドイツの歌謡曲などもありました。映画「会議は踊る」の挿入歌から“ただ一度だけ”であるとか、“モンテカルロの一夜”“水夫の恋”などという当時流行った歌謡曲です。

 私は小学校3年か4年生ぐらいの時に、こういったレコードを何度も聴いて、それをドイツ語らしく歌ってみたりしたけれど、私の耳は固まるのが早かったのか、もうその頃から、ドイツ語の音声を“日本語のカタカナ”に置き換えて捉えることしかできませんでした。
イズミルトルコ語学校で、ドイツ人の若い女性たちにこのドイツ歌謡の話をしたら、「戦前、日本の若者たちがドイツの歌謡曲を聴いていた」という事実には並々ならぬ興味を示してくれたものの、「会議は踊る」も映画について知っていただけで、その挿入歌までは知らなかったようです。“モンテカルロの一夜”をドイツ語風の歌詞付きで口ずさんでみせたら、怪訝な表情で首を傾げるばかりでした。
中学生になると、私もビートルズ・ナンバーなどを聴くようになり、英語の歌詞カードを見ながら辞書を引いたりもしたけれど、既に音を捉えることは全く不可能で、聴けば聴くほど英語を勉強するのが嫌になりました。

 今考えれば、歌やスピーチなど聴こうとしないで、漢文でも学ぶようにリーディングだけやっていた方が良かったのではないかと思うけれど、いずれにしても高校へ行った後は何の勉強もしなかったから、やっぱり駄目だったでしょう。
韓国語を学習するようになると、早速、チョー・ヨンピルの“釜山港へ帰れ”を韓国語で聴いてみましたが、これは割りと容易に音がひろえて、下手なりにカラオケでも歌えるようになりました。韓国語の音は、英語に比べれば信じられないくらい聴き取り易く、ソウルに留学していた頃は、喫茶店で初めて聴いた歌でも、何を言ってるのか九割方聴き取れたこともあります。
トルコ語の歌は、イズミルで勉強し始めた頃に、“イエニ・トゥルキュ”というグループと“レマンサン”という女性歌手の歌を何曲か好きになったけれど、レマンサンの歌はいずれもアゼルバイジャンの民謡で、向こうの方言を使っている為、未だに殆ど聴き取れません。

 イエニ・トゥルキュの歌も、気に入ったのはいずれもギリシャの曲にトルコ語の歌詞をつけたもので、歌詞の内容が難しい上、なにやら早口で歌い上げている部分があって、これまた良く聴き取れない有様です。
せっかくトルコにいるのだから、もう少しトルコの歌を聴いてみれば良いかもしれませんが、残念ながら上記のもの以外には殆ど聴くこともありません。トルコ語も英語に比べれば驚くほど聴き取り易いから、聴きながらある程度歌詞の内容を把握することもできるけれど、何だかメロディが私にはピンと来ないのです。


Lilian Harvey_「会議は踊る」~"Das gibt's nur Einmal " 唯一度だけ