メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

カイセリ/アルメニア教会

先週は、アンカラからカッパドキアへ、それから、94年に一度だけ訪れたことのあるカイセリにも寄って来ました。
94年には、カイセリ市内で二泊し、近郊のタラスという町やエルジエス山の中腹まで足を伸ばしたけれど、今回は午後の4時過ぎに着いて、翌朝8時には出発という慌しい日程であり、方々見て回ることは諦めて、先ずは市内にある古いアルメニア教会を再び訪れてみることにしました。
94年にこの教会を訪れてみたのは、当時イスタンブールアルメニア教会で知り合った老人から、「カイセリへ行くのなら、私たちの美しい教会があるから訪れてみると良いでしょう」と勧められていたからです。
それで、この時はカイセリへ着くと、インフォメーション・オフィスへ行き、教会への道筋を尋ねてみたのですが、返ってきた答えは「そんな教会は存在していません」のひとこと。

仕方がないから、老人の語ってくれた話を手掛かりに、その教会があるという街区へ赴いたところ、辺り一帯は戦火にでも見舞われたかのような有様で、所々に焼け爛れた建物がそのまま放置されています。

残っている家々の造りからして、かつては相当に裕福な人たちが暮らしていただろうと思われるものの、当時は農村から出て来た貧しい人々が住み着き、まるでスラム街のようになっていました。
そのスラム街を歩き回ったあげく、殆ど偶然に近い形でたどり着いた教会らしき建物は、高い塀で囲まれており、入り口の鉄扉は固く閉ざされていたけれど、良く見れば、扉にはその街の様子とは不釣合いな真新しいインターフォンが取り付けられていて、それを押して見たら、中からネクタイを締めてきちんとした身なりの男が現れ、パスポートの提示を求めた上で、私を中へ招き入れます。

入り口をくぐると、その脇には番所のようなものまで拵えてあり、そこで旅行の目的などあれこれ訊かれた末、台帳のようなものに署名してから、ようやく教会の内部へ案内してもらえました。
内部は照明が充分とは言えず、ちょっと薄暗かったけれど、歴史を感じさせる古めかしい味わいがあり、祭壇などの装飾も見事で、実に荘厳な雰囲気。見応えのある美しい教会でした。
番所の男はムスリムトルコ人であり、保安の為に駐在している公務員であると言い、「年に一度、アルメニア人がここに集まって礼拝をあげるので、我々がこうして警備に当たっている」と説明。

しかし、こうして教会の警備に努めながらも、インフォメーション・オフィスではその存在を隠したりして、何だかやっていることがちぐはぐであるように思えました。
さて、今回再びここを訪れてみると、スラム街は大分整理されて、一部は更地になっていたり、新しいビルが建てられていたりしています。それでも、教会の周りには、未だに朽ちかけた家々が残っていて、あまり暮らし向きの良くなさそうな人々が生活しているところも変わっていません。
入り口の鉄扉は、12年前と同じように閉ざされていたから、やはりまたインターフォンを押してみたところ、扉が開いて意外にも10歳ぐらいの少女が顔を出し、「お父さんを呼んで来るから待ってて」と言い残して、扉も閉めずに、向かいにある貧しそうな民家へ駆け込んで行きます。

暫くして、その子のお父さんが現れたので、中を見せてくれるように頼めば、とても困った表情をして、「教会の鍵はここにないんです。写真もここでは禁止されています」と突然現れた外国人に当惑している様子。善良そうなこの人物を困らせてもしょうがないから、おとなしく引き下がり、ちょっと離れた所で写真を撮らせてもらいました。

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