メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

トルコはマイノリティーの寄せ集まりである(ラディカル紙/テュルケル・アルカン氏のコラム)

2004年10月16日付けのラディカル紙より、テュルケル・アルカン氏のコラムを訳してみました。

クルド人活動家のレイラ・ザナ氏がEUの委員会へ、「我々はトルコにおいてマイノリティーではなく、マジョリティーを構成する要素である」と発言したことなどもあって、盛んに議論されているマイノリティーの問題に対し、アルカン氏がその見解を明らかにしています。

****(以下拙訳)

このところ「マイノリティー」に関して色んなことが言われている。そこでお尋ねしたいが、民族的なルーツだけを考えてみた場合、トルコにおける「マジョリティー」とは一体何者だろうか? 

周囲を見渡してみれば、この社会の人々は世界でも珍しいくらい多様性に富んだものであることが解る。

肌の白い人に褐色の人、背の高い人低い人、モンゴロイド顔、短頭、長頭、実に様々だ。ありがたいことに、この全てがトルコ人であり、そこには何の基準もない。ある北国の人々の間に見られる人種的な共通性はないのである。

この状況は、多少地理的な要因によるものだと思う。

我々はかつて世界の中心に胡座をかいていた。有史以来、侵略者や移民、十字軍、モンゴル人、トルコ人、アラブ人、ペルシャ人、ギリシャ人、アレクサンダー大王の兵士たち、ラテン人、この他にも数多の要素がアナトリアという橋の上を往来した。

オスマンの国」は、多くの異なる文化・民族が混ざり合って共に暮らすところとなった。宮廷には、様々に異なるルーツを持つ女性たち、そして、この中でムスリム化した従者たちで溢れかえっていた。

当時、イスラム教を受け入れた者は全て国家の基本的な構成要素と見なされていたのである。

今、周囲の人々に彼らのルーツを尋ねて見ると良い。その多くは、ラズ人、アルバニア人ボスニア人、チェチェン人、アブハズ人、グルジア人、アラブ人をルーツとしていること、そして「トルコ人」であることを明らかにするはずだ。

そして、これが当然のように受け入れられている為、人々はお互いのルーツを尋ねあうこともなければ、気にすることもない。解ったところで、それによって態度を変えたりはしないのである。

そもそも、民族的なルーツを「中央アジアトルコ人」であると自認している人たちが、どのくらい真実を語っているのかは疑わしいものだ。

我々の殆どは、モンゴロイド顔である中央アジアの親族に余り似ていない。

中央アジアからアナトリアにやってきたトルコ人は、ここに元々住んでいたギリシャ人(ビザンチン人)を皆殺しにしたわけでもなければ、追い出したわけでもなかった。

そして、この人たちが水分のように蒸発してしまったはずがないことを考えて見るならば、現在のトルコ人である我々のかなりの部分を、イスラムへの改宗を選択したギリシャ人が占めていることを認めないわけには行くまい。

数年前、エスキシェヒルのある村で8~9千年前の墓地がみつかった。

そこで発掘された遺体のDNAを調べてみたところ、現在の村人たちと親族関係にあることが明らかになり、これを知った村人たちは、「それじゃあ、我々はトルコ人じゃないってことか?」と悲しんだ。

しかし、彼らにしても、また彼らのように「中央アジアをルーツとしていない」数多の同胞ももちろんトルコ人なのである。「トルコ人」ということを血統の問題ではなく、文化の問題であると見なせば躊躇う必要もない。

今議論されている「マイノリティー」と「マジョリティー」についても、この点を考えてみると良い。

私たちの文化や歴史上の遺産は、ヨーロッパのものと異なる。ヨーロッパで「マイノリティー」と言った場合、そこには人種差別主義的なものがある。

しかし、私たちの文化に、民族的なルーツを要因とする人種差別主義的なものがそれほどあるとは思えない。

我々の場合、それより宗教に根ざした差別感の方が問題であるはずだ。(オスマン朝は、人々を民族的なルーツというより、宗教的なルーツによって区別したが、この見方は今でもある程度通用している。)

「我々の差別感は、彼らの差別感より軽い」と言うつもりはない。異なっているということである。

こうした観点から見ると、クルド人やアレヴィー派が、「我々はマイノリティーではない。マジョリティーの構成要素である」と言うのを理解をもって受け止めなければならない。

これは、実際のところをかなり言い当てているのではないかと思う。というのも、トルコには、マイノリティーによって構成されているマジョリティーがあるように見えるからだ。

この中で、クルド人とアレヴィー派はかなりの部分を占めているのではないだろうか? 「どうぞ貴方たちもマジョリティーの一部になって下さい」と申し上げたい。

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