メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

市バス車内のアベック

昨日、イスタンブールで市バスに乗っていた時のこと。

中混みの車内に立っていたところ、斜め向かいの席に座っているアベックの様子が、どうも目について仕方がありません。

大学生同士と思しきこのアベック、何だか舌足らずに喋り出しそうな感じのオネーサンと、股をおっ広げて座っている気取った兄貴なんですが、お互いの腹などを撫で合ったりしてアツアツぶりを見せつけているかと思ったら、ついには衆人環視の中、「ブチュー」と接吻行為にまで及ぶ始末。

周囲の反応を見ようと、私が立っている側の座席に目をやると、ちょうどアベックの対面にキッチリとスカーフを被った高校生ぐらいの女の子が二人座っています。

彼女たち、アベックの行為に気がついているのかいないのか、顔を寄せ合って何か話していたのですが、そのうち各々が自分のカバンから本を取り出し、膝の上に置いて読み始めました。

その開かれたページをチラッと覗いたところ、アラビア文字が沢山書かれていて、どうやら宗教関係の本であるようです。

再び向かい側のアベックに目をやれば、こちらは相変わらず「いちゃいちゃ」してから「ブチュー」を繰り返しています。その対面で、女の子たちは宗教書に没頭。これは、汚らわしい行いを前にして、アラーの御言葉で心を清めようということなのか? 向こうが「ブチューと接吻」すれば、こちらは「アッラーよ、神よ」。

さて、他の人たちの様子を観察してみると、私から3人ぐらい置いて、やはりアベックの斜め向かいに立っている50代ぐらいの男。この人がまた元横綱の曙に良く似ていて、あの土俵上で相手力士を睨み付ける時の形相で、アベックの方をずっと凝視しているから、辺りにはなかなか殺気が漂います。

アベックは、そんな殺気には全く気づかずに自分たちだけの世界に浸っているはずだと思っていたら、突然、股おっ広げ兄貴がすくっと立ちあがり、曙の形相おじさんの肩に軽く手をやってから、ぶっきらぼうな感じで「どうぞ、座って下さい」。

曙おじさんは顔をそむけて「いや、座らない」。

兄貴はヘラヘラ笑いながら「なんだ、ずっと僕らのことを見ているから、座りたいのかと思ったんですよ」。

それから、近くに立っていた初老の男性に席を薦めて座らせると、彼女の横がちょうど座席の切れ目になっていたので、そこに立ち、彼女へ覆い被さるようにして、また自分たちだけの世界に戻って行きました。

まあ、これだけのことなんですが、考えて見ると、イスタンブールの若者達は、ここ10年ぐらいの間に、年配者へ席を譲ることが、めっきり少なくなったようです。

以前は老人が入って来ると、一遍に何人も席を立ったものでした。

だから、今もって老人たちの方には期待があるのか、車内に入いると適当な所で立ち止まらずに、何か物欲しげな様子で最後尾まで歩いて行き、首を傾げてため息をついていたりする人もいます。

しかし現在でも、さすがに、よぼよぼのお年寄り、妊婦、子供を抱いたお母さん等が入って来た場合、必ず誰かが席を譲ることには変わりがありません。この辺は、まだまだ日本より遥かに良いはずです。