メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

7月15日のクーデター

人間は必ず死ぬ/犠牲祭

7月15日のクーデター事件後、多分、西欧の放送局によるインタビューだった。エルドアン大統領は、「アタテュルク空港への着陸を強行した際、死の危険を考えなかったのか?」という問いに対して、「人間は必ず死ぬんですよ。突然、交通事故で死ぬかもしれ…

脱イスラムという信仰?

クーデター事件以来、脱イスラム的な政教分離主義者の中からは、ギュレン教団に限らず、全ての教団を根絶すべきだという声が上がっている。ごく少数派の主張に過ぎず、あまり気にする必要はないかもしれないが、ここぞとばかりに、「やはり宗教は恐ろしい」…

枯木の側で生木も燃える?

ギュレン教団の摘発・排除は、教団の秘匿性のため、なかなか難航しているうえ、杜撰なやり方で様々な問題が現れているそうだ。 密告にもとづいて、いきなり職を解いたり、教団系の資本が1%入っていると言って、企業の活動を停止させたりして、無関係な人た…

エルドアン大統領のカリスマ的な人気

エルドアン大統領ほど毀誉褒貶の激しい人物も珍しい。カリスマ的な人気がある一方、蛇蝎のように嫌う人たちもいる。どちらかといえば、エルドアン大統領をそれほど好んでいない左派ジャーナリストのメフメット・テズカン氏は、出演したニュース番組で、「ク…

トルコはまたしても土壇場で強さを見せた

20年ぐらい前だと思うが、日本の雑誌か何かに載っていた西欧の小説の一節を読んでいて、登場人物のセリフに驚いた。「世の中には信じ難いこともある。例えば、トルコという国が未だ滅んでいないように・・・」こんなセリフだったと記憶している。トルコと…

ギュレン教団のアメリカと日本における不正疑惑

バイデン副大統領のトルコ訪問では、フェトフッラー・ギュレン師の送還も議題に上ったものの、バイデン副大統領は「クーデターへの関与が立証されれば法的な処置を取る」という従来通りの表明を繰り返しただけだった。トルコの一般的な論調では、ギュレン教…

トルコ軍の越境/クーデター事件がもたらした協調・和解ムード

(8月25日) 昨日(8月24日)の未明、トルコ軍はシリアとの国境を越えて、自由シリア軍と共に、ISの勢力下にあったジャラブルスへ進撃した。 ISは、YPGを中心とするクルド勢力によって、要衝地のメムビチを追われ、さらにトルコ国境に近いジャ…

士官高校の入試不正

今日(8月17日)のヒュリエト紙のコラムでイスメット・ベルカン氏は、閉鎖された“士官高校”が如何なる状態に陥っていたのか、入学試験結果の統計をもとに論じている。それによると、2004年以降、数学の30の設問を満点で解答した受験生が急激に増え…

トルコに軍人という階級はあったのだろうか?

(8月13日) トルコでは、共和国の建国以来、長い間、軍部が実質的に国家を支配していると考えられて来た。 この支配者の意に沿わない政党が選挙で勢力を伸ばした場合、軍部と共に絶大な力を持っていた司法の介入により、あっけなく解党されてしまう。解…

クーデターの夜にモスクから響いた祈りの声

クーデターのあった7月16日の未明、トルコ全国のモスクから、“セラ”というアラビア語の祈りの声が響いていたという。イエニドアンの近所のモスクからも響いていたはずだが、私はぐっすり寝込んだまま全く気がついていなかった。未明の2時ごろだったらし…

死刑と民主主義

(8月11日) 連日連夜、各地で繰り広げられていた「クーデター反対集会」も、昨晩(8月10日)を最後にようやく閉幕した。 当初は、日曜日の「民主主義と犠牲者のための大集会」で大団円を迎えるはずだったが、どういうわけか、突然3日間延期された。 …

討論番組の議論

(8月9日) 昨日(8月8日)、ハベルテュルク放送の時事討論番組で、左派ジャーナリストのギュルカン・ハジュル氏が論じたところによれば、クーデターに加担して拘束された後、ギュレン教団との関係を否定している将校らの陳述は、非常に疑わしいそうであ…

イエニカプ-新しき門

(8月8日) 昨日(8月7日)、イスタンブールのイエニカプ広場で開催された「民主主義と犠牲者のための大集会」には、いったいどのくらいの市民が集まっていたのか? 300万を超えていたのではないかとも言われている。広場を埋め尽くした人々のエネル…

ウルデレ爆撃事件~フラント・ディンク暗殺事件

クーデター事件以来、ギュレン教団に関する様々な疑惑が浮上してきたため、この10年ぐらいの間の出来事は、異なる角度から見直さなければならないと言われている。例えば、昨年11月のロシア機撃墜を企図したのが、紛れもなく教団だったとしたら、エルド…

エルドアン大統領の謝罪

(8月5日) 一昨日(8月3日)、エルドアン大統領は、自分たちがもっと早くギュレン教団の実態を見極めていなければならなかったとして、神と国民から許しを請うた。 これに対して、「責任を追及される前に、先手を打って謝ったんだろう」とか、「野党側…

ギュレン教団の空軍・戦闘機への執着?

(8月4日) クーデター事件の全容は、加担した将校らの告白などにより、少しずつ明らかになってきたようだが、どうやらギュレン教団とは関係のない将校の中にも、「クーデター」と知りながら、躊躇うことなく指示に従って行動した者が少なくなかったらしい…

主権は国民にあり

(8月3日) 今日(8月3日)、ヨーロッパ側に渡って、カラキョイからイスティックラル通り、タクシムにかけて歩いた。 街は普段の様子とまったく変わりなかったが、やはり外国人のツーリストらしき姿は少なく、また、その殆どが東欧であるとか、中東、北…

尊師の魅力?

(7月31日) 一昨日(7月29日)、ギュレン教団との関連が疑われているジャーナリストのナズル・ウルジャク氏(女性・71歳)が、滞在先のボドルムで拘束された。 ウルジャク氏は、7月15日にクーデター事件が起こるまで、ギュレン教団の実態を理解…

テロリストにならずに済んで良かった

一昨日(7月29日)拙訳したこの記事からもうかがい知れるように、トルコの人たちは、西欧の余りにも冷ややかな態度に驚き、戸惑っているのではないか。トルコを見下した西欧の冷たい態度は、日本の報道にも反映されているような気がする。戦車を素手で押…

アメリカはクーデターに関与していたのか?

(7月29日)まだ7月29日だけれど、この“通信”の日付では、もう8月になってしまった。6月28日の“アタテュルク空港爆破テロ”、そして7月15日の“クーデター”と、トルコは激動の日々を過ごし、私は性懲りもなく、毎日せっせと駄文を書き連ねている…

我々は西欧が思っているほど愚かだろうか?/エティエン・マフチュプヤン氏のコラム記事

今日(7月28日)のカラル紙のエティエン・マフチュプヤン氏の記事を読んだら、西欧の冷ややかな態度に苛立つトルコの人たちの気持ちが解るような気がして、私も憤懣やる方なかった。しかし、マフチュプヤン氏は、西欧の態度の背景を冷静に分析して、トル…

クーデター反対で連日連夜の大集会

(7月27日) 先週、サバ―紙のコラムで歴史学者のシュクル・ハニオウル氏は、トルコのクーデターの歴史をオスマン帝国に遡って説き明かしていた。オスマン帝国の時代にもクーデターは何度も起きていたそうだ。 トルコ共和国の21世紀になっても、2002…

トルコの英雄的な国民

(7月26日) 一昨日(7月24日)、CHPがタクシム広場で開催した「クーデター反対集会」について、AKP政権寄りのジャーナリストは、会衆からAKPを罵倒する声が上がっていたとか、クルチダルオウル党首がギュレン教団を名指しで糾弾していなかっ…

無信仰者の意見に対するムスリムの反応   挙国一致でクーデターに反対「いい加減にしろ!」

(7月25日) 私はイスラム教徒じゃないし、キリスト教徒でもない。家の宗派は一応浄土真宗だけれど、「南無阿弥陀仏を唱えれば成仏できる」なんて話も、もちろん信じていない。 神道にも、伝統的な習俗として、あるいは観光的な面で多少興味を感じる程度…

非常事態のエルドアン大統領

非常事態宣言下のトルコで、ギュレン教団系の摘発はさらに拡大しているが、無関係な人まで拘束されてしまう恐れであるとか、何故、今まで摘発が進んでいなかったのかという疑念の声も上がっている。 これに対して、エティエン・マフチュプヤン氏は、昨日(7…

ギュレン教団の忠実なメンバー

今日(7月22日)のカラル紙のエティエン・マフチュプヤン氏のコラムによれば、将軍クラスの軍人の20%が、既に逮捕されているそうだ。クーデターに抵抗したのは、ひとにぎりの英雄的な軍人たちに過ぎず、残りの80%の将軍らは、ただ事態を傍観してい…

非常事態宣言下のトルコ

(7月21日:17時45分)よく理解できていなかったけれど、非常事態宣言は既に今日(7月21日)の未明2時から有効となっていて、今日の国会で承認されるのは「その継続」なのだそうである。期間は3ヶ月と発表された。しかし、ボズダー法相は、1ヶ…

非常事態宣言

(7月21日:12時40分) 昨日、エルドアン大統領は「非常事態宣言」を明らかにした。といっても国会の承認を得なければならないため、「宣言を推奨する」といった曖昧な表現だったが、国会の承認が得られるのは確実と言われている。 既に、ギュレン教…

ギュレン教団/大きな愚かさの中の矮小な知性

(7月20日) 2001年から2014年の5月まで、ギュレン教団系の旧ザマン紙でコラムを担当し、教団の人たちと身近に接していたジャーナリストのエティエン・マフチュプヤン氏が、昨日のカラル紙のコラムに、教団の人たちの印象について記していた。 …

クーデターを企てた軍人はギュレン教団のメンバーだけではなかった

(7月19日) クーデターの企てに関して、昨日(7月18日)の“ハベルテュルク”のニュース番組では、イスマイル・ハック・ペキン退役陸軍中将がキャスターの質問に答えていた。 ペキン元中将は、2007年より、参謀本部情報室の長官として任務に就き、…