メルハバ通信

兵庫県高砂市在住。2017年4月まで20年間トルコに滞在。

クルド

クルド問題の行方

90年代に、「分割の脅威」を叫び、「クルド人の要求を受け入れてはならない」と論じた人たちが恐れていたのは、「当初の要求を受け入れると、後からハードルを上げられて次々に要求された挙句、最終的には分離独立を許してしまうことになる」というものだ…

分割とイスラム化の脅威

90年代のトルコでは、分割とイスラム化の脅威が叫ばれていた。イスラム化を目論んでいると見做された政党は、司法の介入によって解党されても、軍事介入で政権の座から引きずり降ろされても、それは致し方ないことだった。クルドの言語と文化の解放を要求…

クルディスタン州

2013年の3月、エルドアン首相(当時)は、ジャーナリストらの質問に答える報道番組で、「2023年、首相だったならば、その時は州制度を提議する」と述べている。 クルド問題が解決に最も近づいた頃でもあり、エルドアン首相は、民主主義の発展と地方…

マルディン市長アフメット・テュルク氏の逮捕

先週土曜日(11月26日)のヒュリエト紙のコラムで、ムラット・イエトゥキン氏は、逮捕されたクルド人政治家アフメット・テュルク氏と面会するために、マルディンを訪れたデニズ・バイカル前CHP党首の談話を伝えていた。それによると、バイカル氏はマ…

クルド系政党HDP

クルド系政党HDPのセラハッティン・デミルタシュ党首らが逮捕されたのは、日本でも大きく報道されたようだ。ある識者は、今回の逮捕を、3段階に分けて進められたHDP対策の3段階目と分析している。まず、9月にHDP系の民選市長24人の解任があり、…

強まる民族主義的な傾向?

現在、憲法の改正が議論されているトルコの法律は、イスラム法ではなく西欧の法律がベースになっていて、これに対する不満の声も殆ど聞かれない。 ひと頃騒がれていた「政教分離の危機」も、今や相当ラディカルな政教分離主義者の間で取り沙汰されているだけ…

トルコ主義/オスマン語~トルコ語

イブラヒム・キラス氏は、カラル紙のコラムで数回にわたり、オスマン帝国の末期、国家を維持する為の思想として現れた「オスマン主義・イスラム主義・トルコ主義」について説明していた。オスマン主義は、帝国内のキリスト教徒ら異教徒も平等に扱う思想だっ…

トルコの多様性と苦悩

民選の市長ら28人の解任は、日本でも大きく報道されたようだ。28人の内、ギュレン教団との関わりが追及されているのは、AKPの3人とMHPの1人だけで、残りは全てPKKのテロ行為に加担したとされるクルド系の市長等である。この市長らは、ギュレ…

アメリカが国家を持たせたい最大の民族

「国家を持たない最大の民族クルド」というのは、いったい何を根拠にしているのだろう? まずは民族の定義からして、様々な見解があり、一定の基準など何処にもないようである。言語上の相違をもとにして、スペイン人とカタロニア人、ロシア人とウクライナ人…

ソフトターゲットのテロ

ガジアンテプは、1993年の夏に一度だけ訪れたことがある。当時は、東隣のウルファとそれほど変わらない“クルドとアラブの街”という印象だった。23年経った今では、産業化が進んで見違えるような大都市になったそうである。クルド人の人口が多いにも拘…

イスティックラル通り

今日の午前中、今度はイスタンブールの“イスティックラル通り”で自爆テロがあったようだ。詳細は未だ解らないが、PKK或いは傘下の武装組織による犯行と思われる。PKKは、3月21日の“ネヴルーズ祭”を焦点に行動を仄めかしていた。「自爆」をやるのは…

仁義なき戦い

昨日(13日)のアンカラの自爆テロは、クルド武装組織PKKの犯行という説が有力のようだ。 南東部のクルド地域におけるPKKの掃討作戦は、いよいよ大詰めを迎えていて、あと一歩のところまで来ているという。そのため、PKKは公然と、「次は大都市を…

ディヤルバクル旧市街

昨年、12月21日付けの“通信”で、「南東部の混乱」について書いてから、既に2ヵ月が過ぎた。しかし、ディヤルバクルの「スル・イチ(城内)」と呼ばれる旧市街に立て籠もったPKKの戦闘員らは、まだ完全に掃討されていないようだ。一昨日も旧市街で一…

アンカラのテロ事件

昨日、アンカラで起きたテロは、まさにトルコ軍を直接標的にした攻撃だったらしい。参謀本部の付近と報道されていたけれど、一昨日申し上げたように、あの一帯はグーグルアースのストリートビューから外されている。 「過剰反応ではないか?」なんて勝手なこ…

歴史の闇

トルコでは、90年代、国家憲兵(ジャンダルマ)によって作られた「JITEM」という組織が、PKKの掃討を掲げて、PKKとの関連を疑われたクルド人らを、非合法的な処置で、次々に暗殺していたのではないかと半ば公然と囁かれている。 当時は、軍を始めと…

天然ガス~原発・・・

イエニドアンでは、今でもたまに1~2時間の停電がある。月に3~4回は起きているような気がする。断水は滅多になくなった。あっても、3~4カ月に一度ぐらいじゃないだろうか。最も成績が良いのは都市ガスで、未だかつてガスが来なくなったのは記憶にな…

クルド問題の解決/レイラ・ザナ氏

一昨日、アンカラの大統領府へ18名の学者やジャーナリストが招かれ、クルド問題等について意見を求められたそうである。今日のラディカル紙のコラムで、オラル・チャルシュラル氏は、自身も招かれたこの会合の様子を伝えている。それによると、エルドアン…

政治的解決か、軍事的解決か?

今日のサバ―紙のコラムでエムレ・アキョズ氏は、カディルハス大学がテロの問題について、2011年来実施してきたアンケート調査の結果を紹介している。 アンケートの要旨は、「テロに対して、政治的あるいは軍事的な解決のいずれが有効か」というもので、…

南東部の混乱

トルコ軍は、PKK掃討のために、南東部の各地域へ1万の兵力を動員して、2人の准将がこれを直接指揮することになったそうである。これはもう内戦に近い状態かもしれない。ニュース番組の画面には、ディヤルバクルの旧市街で繰り広げられている「市街戦」…

メティネル氏とエルドアン大統領

「かつて私たちはタリバンのようだった」と述べたというメフメット・メティネル氏は、南東部アドゥヤマン県出身のクルド人で、和平プロセスにおいても重要な役割を果たしてきたようだ。もちろん、イスラム主義者として、HDPのような左派クルド人勢力に対…

爆破されたクルド新聞社のビル/裏切られた「太陽政策」

先週、イエニカプからカドゥルガをぬけてスルタンアフメットまで歩いた。カドゥルガの街を歩くのは久しぶりだった。途中、今は区の登記事務所になっている建物の前を通りながら、10年ほど前、クルド語のロックコンサートを聴いたのは、ここじゃなかったか…

亡くなったクルド人の友人

昨年の2月頃だと思う、まだ32~3歳だった友人が世を去った。3か月ぐらい経ってから知ったので正確な日付は解らない。久しぶりに近所まで行き、「彼の容体はどうだろう?」と訊いたら、「えっ? 知らなかったの? もう亡くなったよ。3か月ぐらい経つん…

トルコ総選挙:在外投票-日本では・・・

サバ―紙のインターネット版に、在外投票の各国別の結果が出ていた。まず、トルコからの移民が最も多いドイツを見ると、以下のような結果で、本国よりもAKPの得票率はさらに高くなっている。*ドイツAKP-59% (小数点以下四捨五入)CHP-15%…

選挙の結果

昨日の便りを書き終えた21時(昨晩)頃の段階でも、AKP圧勝の勢いが伝えられていたけれど、開票が進む中、その後も大きな変動は起こらず、最終的にAKPの得票率は約49%に達した。これは、2011年の約50%(49.9%)に次ぐ数値である。選…

在日クルド人

つい3週間ほど前は、トルコでも「山口組分裂・抗争」のニュースが大きく報道されていたため、在トルコ日本人の中には、とても恥ずかしがっていた人たちがいたらしい。 そういう日本人を、「ヤクザは恐ろしいですねえ?」と面白半分の好奇心で質問攻めにして…

トルコへの外圧

メルケル首相のトルコ訪問を前にして、トルコの知識人ら100名が連名でメルケル首相へ手紙を出していたことが話題になっていた。手紙で100名の知識人は、エルドアン大統領とダヴトオウル首相がジャーナリズムを弾圧するなど、EUが定めた人権を侵して…

トルコ人とクルド人

米国におけるアングロサクソンの割合はどのくらいになるのか、ネットで少し検索してみたら、「建国時に約60%、現在は11%」といった記述が見つかった。現在、最も多いのはドイツ系で17%になるそうだ。しかし、建国時はともかく、今やアメリカの社会…

トルコ人・クルド人・アラブ人

中学か高校になって、世界史を習い、清朝の皇帝は満州族であると教わったけれど、私にはこれが何だか奇異に思えてしょうがなかった。その後も、世界史では、ソビエト・ロシアの独裁者スターリンがグルジア人だったというような話に首を捻ったりしていた。日…

工事現場の議論

現場の休憩時間に、2人の作業員が何やら議論していたので、側に寄って聞いてみたら、なんとローザンヌ条約の是非を論じ合っていた。 この2人は、南東部マルディン出身のイスマイルと黒海地方シノップ出身のウール。 イスマイルは高卒の29歳、かなり信心…

工事現場で出会ったクルドの人たち

犠牲祭になって中断しているけれど、14日から市内の工事現場に通訳で入っていた。犠牲祭の休暇がなければ、日本の技術者による部分的な施工は、とうに完了していて、私の業務も終わっていただろう。短い期間だが、久しぶりに現場で働けるのは嬉しい。こう…